保育園で働いて

| コメント(0) | トラックバック(0)

 昨年の12月末で、僕が働く保育園での仕事が終わったので、長くなりますが報告したいと思います。
 僕はメニノジェズースという2~4歳の子どもを預かる保育園で8ヶ月間働かせてもらいました。この保育園は全日制で、2人の教育者と共に、午前・午後に各1人のボランティアが働いています。僕はこの保育園の午後担当(2~5時)のボランティアでした。

125.jpg
左が午前担当のドイツ人ボランティア、右が午後担当の日本人ボランティア。Tシャツは先生からのクリスマスプレゼント。手形は子どもたちのもの。


 僕の仕事は2時から始まるので、保育園に到着して最初の仕事はお昼寝をしている子どもたちを起こすこと。僕は少しギターができるので、ギターを弾いて彼らを起こしていました。彼らが起きたら、アクティビティの時間。室内で遊ぶ子、砂場や遊具で遊ぶ子様々です。そして、3時半が過ぎた頃、お話の時間が始まります。4時からはおやつの時間。その後、5時までは親や兄弟が子どもを迎えにくる時間帯になっています。

画像 003.jpg
寝ている子ども。僕もたまに寝させてもらいます笑


 さて、ここで少しモンチアズール創始者ウテ・クレーマーさんの講演の内容を紹介したいと思います。ウテさんは、近年の子どもの調査研究についてこう述べています。

「その調査の結果はいつも、いかに子どもの小さな時の生活のあり方が、大人になってからのあり方を決定するかということについて示しています。大人になってからの人生が、いい形で開かれるために、いかに子ども時代に起こったことが、基本的、根本的にエッセンシャルに重要なことであるかということを示しています。」
---------------ウテ・クレーマー「子ども時代にしか出来ないこと」、『日伯交流No.19』、(社)日本ブラジル交流協会、平成15年、7ページ----------------

 何が子ども時代に重要かというと、まずひとつに心の頼りにできる人がいたかどうか。親がその代表ですが、そこから信頼や人とのつながりを学ぶ。また、もう一つが遊びという行為だそうです。つまり、遊びを通じ、地球の要素(土、水、木など)と出会い、また人と結びつくこと。
子ども時代にいかに子どもらしい時間を過ごせるか。それがキーポイントであり、モンチアズールの教育活動にも大きく影響を与えています。

 僕が保育園で働いて考えるようになったことは、そのうちの一つ「心の頼りにできる人」の存在についてです。保育園には、親から暴力を受ける子ども、片親の子ども、家庭にドラッグの問題があったり、家庭、特に親に問題を抱えている子どもが多いのが事実です。しかし、それでも子どもたちは自分の親を信頼しています。保育園の子どもの中には、0歳のときから同じ先生に面倒を見てもらっている子どもが少なくありません。それは1人の先生ができるだけ長い時間子どもと接することが、心の頼りになる人に繋がるからです。

 しかし、子どもが泣き出すと、わざわざ日本からやって来たこの僕ではなく、また長く面倒をみてもらっている先生でもなく、多くは「お母さーん」か「お父さーん」と言って、助けを求め泣いてしまいます。そんな子どもの姿を見ていると、親の存在、責任の大きさを強く感じます。

s-PA102591.jpg
親子でツーショット。


 少し話がそれるのですが、心の頼りになる親について。
 ちょうど今から1ヶ月ぐらい前でしょうか。ファベーラに住むある少年がある日本人ボランティアのカメラを盗む事件がありました。実は、モンチアズールでイベントが行われたときに、私たちが不注意で彼にデジタルカメラを貸してしまったのが事件の発端です。私たちは、彼に貸したカメラが盗られたことに気づき、モンチアズールの関係者に協力してもらい、カメラを無事、返してもらいました。

 その後、私たちは彼の家に向かい、家族と一緒に話をしました。驚いたことに、そこには、保育園で面倒を見ている彼の弟、そしてよく僕に話しかけてくれる母親もいました。だから、母親とは目を合わせるのがとてもつらく感じました。
私たちは、彼に事件の説明を求めました。結局、頑なに説明を拒んでいた彼も、自分でカメラを盗み、それを売ろうとしていたことを認め、私たちに謝りました。その間、彼の両親も彼を叱り続けていたのですが、最終的には母親が泣き出してしまいました。
 実はカメラを盗んだ彼は窃盗の常習犯で、私の保育園でも先生の携帯を盗んだことがあったのです。そのとき、保育園の先生からこう言われました。「彼の親は盗みで入ったお金を見てみぬふりして使っているのよ」と...。
 あくまで、僕が人から聞いた話ですが、もし本当にそうだったら、どうでしょうか。その話を聞いていたのもあり、彼の家で母親が子どもを叱りながら涙を流している姿を見て、ひどく複雑な気持ちになり、僕も泣いてしまいました。


 僕はもうじき日本に帰らなければなりません。保育園で8ヶ月働きましたが、到底彼らの今後の人生を支えられるような心の頼りになる大人には及びません。カメラの事件があった時も、彼の口から本当のことを聞くことでいっぱいでした。しかし、僕は彼とたくさん話をしたり、今後の彼を心から大きく支えるような存在にはなれません。

 しかし、僕にもできることはあり、考えることがあります。僕が将来、結婚して子どもができたら絶対寂しい思いはさせない。そして僕の両親がそうであったように、常に心の頼りになる親になりたいと。そして僕がこう想い、それを実践していくことがモンチアズールに対する恩返しのひとつになるのかもしれませんし、世界を変えていく小さな小さな一歩になるのかもしれません。

PA012442.JPG
立派な大人になってね


 僕が保育園で働いていた時、モットーにしていたことは、「子どもを理解し、受け止めること」。
子どもがどんなに暴れたり、へそを曲げたりしても、なるべく怒らずに、深呼吸して、頭を冷やしました。なぜなら、どんな子どもであれ、彼らの行動・様子には必ずその原因になる背景があるからです。さすがと思ったのは、先生たちは子ども1人1人の家庭状況を実によく熟知していること。先生はよくそれらのことを僕に教えてくれました。

PC103293.JPG
保育園の先生です


 さあ、そのおかげなのか、8ヶ月間という時の流れのおかげか、自慢じゃないけど子どもたちもとてもなついてくれました。僕は保育園外で子どもと会うのが好きです。なぜかって、子どもがなついてくれてるかよく分かるんですね。スーパーで偶然会って抱きついてくる子もいれば、道端で目が合ったのに無視されたり。ついつい「クソー、無視はないやろ」とつぶやいてしまいますが、それもまた可愛かったりします。先日も1ヶ月の休暇を挟み、久しぶりにファベーラで働いていると、僕の保育園の子どもが「チウーー」と言って僕を見つけてくれ、坂の上の方から走って来ました。僕も嬉しくなり駆け寄ってその子を抱っこしてほっぺにキスをしました。そして思いました。うーん、やっぱり保育園で働いていてよかったと。そして僕が帰ってもずっと僕の事を覚えていてほしいよなー。
s-ガブリエル.jpg
一番僕になついてくれた子です


 ざっとこんな風にまとめてみましたが、どうでしょうか。というか、別に僕はまだ帰国しませんので、またそれまで機会があれば、アップしたいと思います。


20100129
しもむかい


トラックバック(0)

トラックバックURL: http://www.cribrasil.org/blog/mt/mt-tb.cgi/83

コメントする

2010年2月

  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28            

このブログ記事について

このページは、toshifumiが2010年1月30日 07:24に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「旅日記②」です。

次のブログ記事は「旅日記③」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

当サイトについて

タグクラウド

リンクリスト